No.16
多极化する世界:新兴国台头が意味するもの
主席研究员 松尾 隆
◆见えてきた 2010 年代の世界経済の构図:新兴国の台头
2010 年は,先进国から新兴国へと,2010 年代の世界経済の主役交代が明确になった年 だった. リーマンショックを契机とした世界金融危机から 2 年,世界各国が协调した大胆な金融 缓和や财政出动により, 世界全体でみれば危机は封じこめられ, 2009 年には各国ともⅤ字 型の回复を记录した.しかし,2010 年に入ると,先进国は政策効果が一巡した后,リーマ ンショック以前の水准に达しないまま足踏み状况に陥っている.これに対し,多くの新兴 国が,中国向け输出に加え,インフラ整备,个人消费が盛り上がっており,所得上升→消 费·设备投资増加の好循环による,ダイナミックな成长局面に入りつつある.経済成长に 伴い,都市部中产阶级が増大,少子化も进んでおり,人口动态面からも経済成长の好机を 迎えている. 2010 年 10 月の国际通货基金(IMF)による世界経済见通しで,参考数値として 2015 年までの予测が行われている.金融危机前の 2007 年を 100 とした指数でみると,先进国 は 2015 年でも危机前の 5～10%アップの水准に止まっているのに対し,インドや中国は 1.8～2 倍超の水准に达する予测となっている.成长市场がどこかは明らかだ.
金融危机からの回复度合いの违い (2007年=100) 2010年 日本 96.3 英国 96.7 ドイツ 99.4 米国 99.9 韩国 108.7 インド 123.3 中国 132.1
2015年予测 105.1 105.9 108.5 114.3 133.2 182.5 208.0 2007年を100とした场合の各国GDPの2010年(见込み),2015年(予测)の水准 (资料)IMF World Economic Outlook 2010.10 databaseにより作成
第二次世界大戦后の日本, 西ドイツ, その后のアジア NIEs の高度成长の构図が, 中国, インド,ASEAN レベルで再现されつつある.この高度成长の波は,南米,アフリカにも 広がろうとしている.世界経済は歴史的な転换点を迎えようとしている.
◆新兴国へのシフトが意味するもの:多极化·环境制约·イノベーション
第二次大戦后の日本,西ドイツ,アジア NIEs の高度成长と今の中国,インドなどの新 兴国の成长が世界にもたらすインパクトの违いは,大きく三つある. 一つは,国际的な合意形成が困难になり,二国间,地域内の连携が优先されること,二 は,环境制约が厳しくなること,三は,新兴国のインフラ整备,中产阶级の消费が成长市 场としてイノベーションの主役になることである.
①多极化する世界:発言力増す新兴国,困难になる合意形成
日本などの高度成长は,経済的には,输出市场としての米国市场に依存,安全保障面で も,东西冷戦下,米国の核の伞の下で达成されたものだった.世界経済における,米国の 优越的地位は明らかだった. これに対し,中国,インドは膨大な国内市场を抱えており,経済的な米国市场への依存
度は低い.军事的にも核保有国であり,安全保障面でも自立している.米国の国际社会に おける地位が相対的に低下し,これらの国々の発言力が増すことは,グローバル化の进展 で各国の利害が対立する状况での合意形成が飞跃的に难しくなっていることを意味する. WTO 交渉や地球温暖化交渉が暗礁に乗り上げている现状は,各国间の利害対立の深刻さ を象徴するものだ. 世界的な合意形成が困难になるなか,それに代わる机能を果たし始めているのが,二国 间,地域内における合意形成である.これまで,日本は国际机関における交渉を优先して いたが,今后は,国益を守るために二国间,有志连合による交渉に轴足を移していくこと が求められる.
②人口大国の成长がもたらす地球环境の制约
日本やドイツの人口は合わせても 2 亿人弱,アジア NIEs はさらに小规模だ.これに比 べ,中国 13 亿人,インド 12 亿人,ASEAN5亿人,合わせて 30 亿人の経済成长が地球环 境にもたらすインパクトは桁外れに大きい. 英エコノミスト志は,この 1 年の地球温暖化交渉を振り返り「当初の 2050 年に产业革 命以来の温度上升を 2 度に抑制する目标はもはや现実的ではない.気候変动を前提とした 适応対策に舵を切替えるべき时」 (2010.11.27 号)としている. 気候変动に対する适応対策としては,防灾のためのインフラ整备,旱魃に备えた农作物 の品种改良·普及などが考えられる.同志は, 「适応対策として最も有効なのは,贫困国の 経済発展を促すことだが,経済が発展すればエネルギー消费量が増えるというジレンマが ある.先进国は温暖化ガス减少につながる技术开発を行い,その技术移転を急がなければ ならない」としている. 先进国は,低炭素社会を実现するために,资源利用の効率を高めるイノベーション,す なわち,资源生产性向上に着目したイノベーションが求められている.

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